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【F1LIFE新書】2012年中国GP 小林可夢偉『希望と絶望の狭間で』


2012-4-25 2:02


 可夢偉殊勲、3番グリッド獲得!
 
 予選4番手タイム、3番グリッドからのスタート。
 中国GPのザウバーは、確かな速さを見せた。
 表彰台を強く意識しての決勝だったが、
 彼らの目論見は次々と崩れていく。
 その理由とは?


 あのマレーシアGPの後、可夢偉は日本で2週間を過ごした。
 東京の街のあちこちには、やや遅れて咲いた今年の桜の花が、鮮やかで優しい色を見せている。ジョギングをしようと一歩ホテルの外へ出れば、公園で花見をする人々の喧噪も目に入る。
 そんな人々の楽しげな表情から眼をそらすように、可夢偉は一人黙々とトレーニングに打ち込んだ。
「ホテルのジムでね。人が花見してるのなんて見たくないでしょ?(苦笑)」
 可夢偉自身は決して口にはしなかったが、チームメイトが表彰台に上ったマレーシアGPからずっと、可夢偉はじっと我慢の日々を過ごしてきた。多くを語らないままサーキットを後にし、日本でただひたすらにトレーニングだけをこなしてきた。
「僕は何にも間違ったことはしてないのに、なんでこんなことになるんや」
 チームの判断に戸惑いを見せながらも、可夢偉はチームに対する批判は絶対に口にはしてこなかった。
 この2週間の悔しさ、つらさを問われても、可夢偉は「別に……」と答をはぐらかした。
「僕は彼らを信じるしかないから。自分だけが勝手に行動したって、チームワークを乱すだけやしね」
 そして可夢偉はふと漏らした。
「彼らは失敗しても『ごめんね』で済むけど、僕は人生がかかってますからね」
 ここで結果を残すことができるか否か。それは来季、そしてさらにその先の将来へと大きく繋がっている。
 自分の力を示すリベンジの場。可夢偉は中国GPを待っていた。
 1年ぶりに訪れた上海。その広大なパドックに建つザウバーのホスピタリティユニットには、そんな可夢偉を歓迎するかのように桜の花が咲き誇っていた。

(続く)

【F1LIFE新書】2012年中国GP 小林可夢偉『希望と絶望の狭間で』

著者:米家峰起
発行日:2012年4月25日
ページ数:21
データ形式:PDF(PC、iPad/iPhone、Android対応)
データサイズ:7.5MB
ダウンロード価格:210円(税込)
(販売期間:2012年5月9日まで)

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