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【F1LIFE新書】2012年バーレーンGP 小林可夢偉『湾岸の国に季節は巡って』


2012-4-26 19:50


 絶望的な失速。

 全く入賞圏に絡むことができないまま終わった週末。
 その裏側で展開されていたドラマとは?


 水曜の朝、可夢偉はバーレーン国際空港に降り立った。
 ともすれば日本の地方空港よりも小さく、華やかなブランドショップも並んでいない簡素なこの空の玄関口が、この国の有り様を物語っていた。
 ペルシャ湾に浮かぶ、東京都の3分の一にも満たない小さな島。
 その島は一昨年来、民主化運動の波に揺れている。昨年はグランプリ自体がキャンセルとなり、今年もつい1週間前まで、その開催に疑問符が付けられていた。FIAが公式的に声明を発表したのは、中国GPの週末に至ってからのことだった。
「一度日本に帰ってから来ましたよ。バーレーンやるとは想像もしてなかったから、(上海行きと)つなげてなんていうチケットの買い方してなかったんで。僕ら、それまで全く気にもしてなくて、中国に行ってから初めてチケット買いましたもん(笑)」
 政治的な要素が加わるのを怖れてコメントを差し控えるドライバーが少なくない中で、可夢偉は可夢偉らしく、そう言って笑った。
 フォースインディアのスタッフの乗った移動車が火炎瓶騒動に巻き込まれかけたが、可夢偉はそんなことは意に介さない様子だった。
「全く気にしてないし、逆に周りの人たちの方が気にしてるんじゃないかっていうね。気にするから余計に気になるんじゃないかっていうね。昨日フォースインディアがどうとか聞かれて、僕は『何それ?』っていう状態やから(笑)」
 可夢偉にとって大切なのは、そんなサーキットの外の出来事ではなかった。
 レースがしたい−−。
 上海のレースを不本意な形で、しかししっかりとした手応えを掴んで終えた後、可夢偉は「バーレーンに行きたい」と話していた。それは本心からの言葉だった。
「もしこのレースがなくなってたら休みが長くなってたけど、休みを取るかレースを取るかって言われたら、今の成績ではレースを取った方がいいから、あって良かったかなって(笑)。ここまで絶好調でもう充分かなっていう感じなら休みでも良かったけど、速いけどポイント獲れてません状態やから(笑)、バルセロナに行く前にここでなんとかね。速いのに獲れてないんですもん、ポイント」
 それはつまり、可夢偉の得ている手応えというものが、9位や10位で終わるようなポテンシャルではないということだ。
 本来ならばもっと大量のポイントが獲れるはずのマシン。その実力を、全て発揮して証明したい。
 開幕序盤のフライアウェイ戦の最後となるこのバーレーンGPの開催は、可夢偉にとって歓迎すべきことだった。

(続く)

今回は応援アイコンをペーパークラフト化した付録がついています。原寸印刷での完成サイズは8cmです。


【F1LIFE新書】2012年バーレーンGP 小林可夢偉『湾岸の国に季節は巡って』

著者:米家峰起
発行日:2012年4月26日
ページ数:21
データ形式:PDF(PC、iPad/iPhone、Android対応)
データサイズ:6.0MB / x.xMB
付録:中国GPザウバーC31 #14 ディフォルメペーパークラフト型紙
付録データサイズ:3MB
ダウンロード価格:210円(税込)
(販売期間:2012年5月11日まで)

特別付録:SDザウバーC31ペーパークラフト
制作時間4〜6時間程度の、かわいいF1マシンのペーパークラフトです。
その印刷用データを特別にダウンロード可能です。

購入はこちら『F1LIFE』ストアにて。
https://www.f1-life.net/store/f1lb-0012.html

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