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【F1LIFE新書】小林可夢偉

2012年シーズン総括『歩んできた夢の軌跡』

2012-12-20 19:40


 夢のこれまでと、これから。

 長かったシーズンの、明かされなかった苦悩と真実、
 そして未来に向けた思い。

 12月5日、シート獲得のために奔走する可夢偉が語った、
 1万7000字インタビュー完全収録。
 彼はどんな思いで戦い、挑戦を決意したのか。
 それを知ってほしい。


 12月5日、小林可夢偉は六本木に姿を見せた。その表情に少し疲れが窺えたのは、午前11時という彼にとっては早い時間のためではなく、ブラジルから日本に戻って以来スポンサー獲得のために忙しく走り回ってきたせいだった。
 長かったシーズンが終わっても、息をつく暇などなく可夢偉の戦いは続いていた。昼はスポンサーとの交渉、そしてヨーロッパが朝を迎える夜になればチームとの交渉。睡眠時間が短くなり、疲労が蓄積するのも当然のことだった。
 一流チームへの移籍を決めたチームメイトと、先行きの見えなくなった可夢偉。同じザウバーのシートに座りながら、どうしてこれほどまでに二人の明暗は分かれてしまったのか。
 2012年の可夢偉は、我々の知らないところでどんな戦いをし、そしてあの表彰台までたどり着いたのか。
 それを知ることで、小林可夢偉というレーシングドライバー、そして小林可夢偉という一人の人間の本当の戦いが見えてきた。
 ホテルの一室で、オーク材のテーブルを挟んで向かい合い腰を下ろした可夢偉は、静かに語り始めた。

ーーこの1年を振り返ってみると、どんなシーズンでしたか?
「アップ・アンド・ダウンの……あんまり運が無かったシーズンやったかな(苦笑)。長かったようで短かったような。20戦っていうと長いかと思ったけど、終わってみるとあっという間だったなぁっていう、まぁよくある話やけどね。開幕したオーストラリアなんてだいぶん前のことのように感じるけど、でもいざ始まってみると短かったよね……」
ーー”アップ”よりも"ダウン"の方が多かったよね?
「まぁ、運の悪いレースが多かったよね。シーズン前半も走りは良かったけど、運が悪くて結果に繋がらなかったし」
ーー逆に"アップ"の方は?
「流れが良い時は表彰台とか4位、5位を争えたり、今までにないリザルトが争えるレースができたよね」
ーー開幕前にはどんなポジションが狙えそうかと聞いても、「あんまり期待したくない」と言っていたよね。
「開幕前に期待しすぎると、シーズンに入ってから5位とか6位でもみんな『普通じゃん』って言い出すから(笑)」
ーーでも、良いところが狙えそうだというのは分かっていたんでしょ?
「そりゃあ、分かりますよぉ(苦笑)。ただそれはね、行けるからって実際に(目標だと数字で)言っちゃうと、後で痛い目を見るのは自分やからね、正直なところ」
ーー表彰台も行けそうだと思っていた?
「まぁ、上手くいけばね」
ーーそれも、何回も?
「うん」
ーーザウバーのこれまでのパターンだと、ヨーロッパラウンドに入った辺りから息切れしていたけど、今年は……。
「まぁ、意外に(コンペティティブさが)続いたよね。まさか鈴鹿まであんなポジションで戦えるなんて、誰も思ってなかったし。これは多分、去年の反省を生かして、今年1年でチームがすごく成長できたからなんですよ」
ーー1年を通してマシンを上手く開発できたということ?
「開発というよりも……きちんと正確な判断ができた、っていうことですね」
ーーシーズンが短く感じたというのは、それだけ充実していたということかな?
「充実していたというか、いろいろトライをしたし、しっかり戦えるところにいたし、戦えば戦っただけ結果が出るポジションにいたっていうのが大きかったよね。だから良い意味でいろんな頑張れる要素があったっていう」
ーーじゃあ、自分としては満足度は高い?
「まぁまぁ、そうですね」
ーーベストレースは鈴鹿だと思うけど、それ以外にも良いレースはあったよね。
「ペースとしてはホッケンハイムも良かったし、バルセロナも良かったし、バレンシアも意外と良かったしね。シルバーストンは思ったよりも良くなかったけど、あれは直線がそんなに良くなくて、周り(のチーム)もアップデートしてきたからタイミングが合わなかったっていうことだったんでしょうね」
ーーバルセロナも予選のトラブルがなければね。
「全然、表彰台やったやんな、あれは。優勝争いまでできたかどうかは分からへんけど、表彰台は確実に乗れてたよね。バレンシアも表彰台に乗れてたし、まぁ多分スパも乗れてたでしょ、(2番グリッドだから)さすがに」
ーーワーストレースは?
「ハンガリーかな。何しに来たんか分からんようなレースやったよね……。マンガリッツァ豚(イベリコ豚と同じDNAを持つ品種の豚で、ハンガリーの国宝に指定されているが食べることができる)を食べに来ただけやったみたいな(苦笑)。まぁまぁ(味は)普通やったけどね、何が国宝なんか分からへんし(笑)」
ーーずっと「完璧な週末ができれば」と言いながら、できたのは鈴鹿だけだった?
「う〜ん……鈴鹿だけでしたね、今年は。それでも60ポイント獲れたっていうのはなかなかすごいことやと思うし、そういう意味では悪くないシーズンやったと思うよ。思ったよりも結果が出せてないけど、結果は今までで一番ええんやからね」
ーーでも開幕前の期待からすると、期待以下だった?
「まぁ、それはもちろんそうやけど、それは(運だから)しょうがないからね」
ーーどのあたりまで行きたかった?
「そりゃ、もっと行きたかったよ。100ポイントくらい獲りたかったけど……でも残念ながらそんなことは言ってられない状態になったんで(苦笑)。まぁでも、普通にレースができてたらそのくらい獲れてたペースやったと思うから」

こんなタイヤのためにクルマを作ったんじゃない!
自分らしいドライビングができない歯がゆさ

ーー去年はタイヤにドライビングスタイルを合わせるのに苦労したよね。
「今年はだいぶん合わせてきましたよ。上手くちょっとずつ自分の走りを合わせてこられたから」
ーーその辺りの難しさというのは去年ほどじゃなかった?
「そうですね。でもまぁ、僕の好きなドライビングスタイルではないけどね。走ってて楽しくないことはないですよ。ただ、自分が得意とする乗り方ではないっていうことですね」
ーーどういうドライビング?
「ブレーキを頑張って遅らせて、ガンと止まって曲げて、っていうタイヤではないんですよ。ブレーキをほどほどにして、ニュートラルにクルマを回して立ち上がる、みたいな。僕にはそんなに向いてるタイヤじゃなかった」
ーーレーシングドライバーとしては、攻めてる感じがしない?
「とかじゃなくて、今までのレーシングタイヤじゃないよね。頑張らなかった人がタイヤを痛めなくて速い、みたいな」

こちらに続く)

購入はこちら『F1LIFE』ストアにて。
https://www.f1-life.net/store/f1lb-0041.html

※当該記事は『Sportiva』のために行なわれたインタビューをノーカット収録したものです。『Sportiva』で配信された記事はこちらでご覧頂けます。

【F1】可夢偉が振り返る2012シーズン。「今年は求められるレベルが高くなっていた」
【F1】可夢偉の2012年の自己採点は?「普通に走れていれば余裕で上に行けていた」
【F1】可夢偉が語るシート獲得活動の現状。「道筋が見えている」














【新書】2012年シーズン総括 小林可夢偉




著者:
米家峰起
発行日:
2012年12月20日
ページ数:
49
データ形式:
PDF(PC、iPad/iPhone、Android対応)
データサイズ:
7.7MB
ダウンロード価格:
210円(税込)





ダウンロード価格(税込):¥210円







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