3月17日、オーストラリアGP決勝は7番グリッドからスタートした
キミ・ライコネンが劇的な逆転優勝劇を果たした。
ライコネン優勝の鍵となったのは、やはり
タイヤ戦略だった。金曜フリー走行でのデグラデーションレートから計算して、レース前の戦略
"プランA"は2回ストップ作戦。スーパーソフトでスタートして、ミディアムで残り2スティントを
22〜25周程度ずつ走るというものだ。
スタートでトップに立ったのはポールの
ベッテル、それに続くのは好加速を見せたェラーリ勢。2番グリッドのウェバーは
標準ECUのトラブルでKERSを失い、テレメトリーにも障害を抱え、これをリセットするまでの間にポジションを大きく失うこととなった。
当初の予想通り、スーパーソフトはすぐに性能の低下を見せた。4周目にはバトンがピットインし、
9周目までにはほぼ全員がタイヤ交換。ベッテルがメルセデスAMG勢だけが13、14周目まで引っ張ったが、これはミディアムの寿命に不安があったためだと見られ、実際にはフロントタイヤの摩耗は酷く、すでにペースは大きく落としていた。
ミディアムを履いた
第2スティントで、レースは動いた。ベッテルのペースが伸び悩み、マッサとアロンソから猛追を受けることとなった。タイヤ温度を
ワーキングレンジに入れることができず、金曜フリー走行や予選時のような速さが引き出せず、そのせいでさらにデグラデーションの進行も速くなるという
悪循環に陥っていた。
これを見たアロンソは、戦略を
"プランB"の3回ストップ作戦に切り替え、20周目にピットストップしてベッテルとマッサの
2台をアンダーカット。一気に
実質トップに立ったかに思われた。
だが、5番手を淡々と走っているように見えたライコネンは、いつまで経ってもピットインしない。なんと、
上位勢の15周前後に対してライコネンは当初の予定通りである
25周もの周回を第2スティントのミディアムタイヤでこなしてしまったのだ。
日曜のメルボルンは晴れたり曇ったり小雨が降ったりと不安定な天候に悩まされ、予想よりも寒い難しいコンディションでのレースとなった。その中で、ライコネンだけが
"プランA"を成功させた。タイヤに優しいマシンを持つライコネンだけが、淡々と
自分のレースをこなし、気付けばトップに立っていた。後方からアロンソが追撃の姿勢を見せれば、プッシュしてその差を再び開く。この大荒れの開幕戦で、ライコネンはそんなレース巧者ぶりを見せつけたのだ。
そして、しっかりと2位、3位に入ったアロンソとベッテルの強さも光った。マシンの力の全てを引き出し、もしくはそれ以上の走りをした3人が、チャンピオンシップ争いの主役たちとなるに足るシーズンの好スタートを切ったと言えるだろう。
(text by Mineoki YONEYA / photo by Wri2)