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【MYS日曜分析レポート】

後味の悪さを残す三者三様の表彰台

2013-3-26 15:19


 3月24日、マレーシアGP決勝は王者セバスチャン・フェッテルがポールトゥウインで今季初優勝を飾った。

 今のレッドブルは、タイヤマネージメントに極めて大きな不安を抱えている。そのことが皮肉なほどに克明に表われたレースだったと言える。



 決勝の45分前からセパンにはが降り、コースのセクター1などが濡れた状態で一部には水たまりがあるというコンディションでのスタート。好加速で2位に浮上したフェルナンド・アロンソはターン2での接触によるフロントウイングの破損で早々にリタイアを余儀なくされ、フェッテルはスタートから首位を守ったものの、5周目という早い段階でスリックタイヤへの交換を決断。これがフェッテルのレースを大きく狂わせることになった。




 まだ濡れているコースに戻ったフェッテルはタイヤの温まりに苦しみ、大きくタイムロス。2周後に絶好のタイミングでピットインした2位マーク・ウェバーに先行を許すことになってしまった。フェッテルはここから「ウェバーと3秒の間隔を空けてタイヤをセーブする戦略」を採り、逆転のチャンスを窺うことになった。ウェバーのペースに「遅すぎる、彼をどかせてくれ!」と焦れるフェッテルを、エンジニアのロッキーが何度もなだめすかしながらのレースだった。

 金曜の時点よりも寒いコンディションとなったことで、タイヤのデグラデーションは大きい。各車はドライに換えてから3回のストップで走り切るプランBに変更するチームが増える。そしてその中で、またしてもロータスだけが他より1回少ない実質2回ストップで走り切ったことは注目に値する。

 フェッテルは最後のピットストップまでウェバー攻略がならず、チームからはエンジン回転数を落とす「マルチ21」の選択指令、つまりバトルをせずにポジションをキープしろというチームオーダーが2人に通達された。しかしフェッテルはこれを無視してピットアウト直後の43周目のターン1〜4でバトルを繰り広げ、さらに3周後に同じようなサイドバイサイドの激しいバトルの末、ウェバーをパスして首位に立った。フェッテルにとっては昨年インドGP以来の勝利。これでチャンピオンシップでもリーダーに立った。



 後方ではメルセデスAMG勢が3位・4位を走行。チームはウエットコンディションを想定していたのか、前を走るルイス・ハミルトンは予想以上の燃料消費に苦しみ、大幅な燃費走行を強いられる。チームからはスロットルのリフトオフ(早めに戻す)、コーナーでのコースティング(オフスロットルでの走行)、遅めのダウンシフトと、重ねて次々と指示が飛ぶ。4位のロズベルグは「前に行かせてくれ、レッドブルを追いかけようよ」と懇願するが、チームはこれを跳ね返してそのままの順位でフィニッシュ。

 フェッテルは最初のドライタイヤへの交換を適正なタイミングで行なっていれば、純粋なペースの速さからしてこのような展開に苦しまずに済んだはずだ。あの時点で首位を走っていたのだから、後続勢の動きを見てから動けば良かったのであって、敢えて自分からあのようなリスクを冒す必要はなかったはずだ。



 同じチームオーダーで縛られながらも、フェッテルが本能のままに行動しそれが破られたレッドブルと、理性によって押さえつけられたメルセデスAMGという対照的な結果。いずれにしても表彰台に立った3人全員に笑顔がなく、それぞれが心にわだかまりを残したレースとなった。



(text by Mineoki YONEYA / photo by Wri2)


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