フェラーリは予選で2台を編隊走行させ、スリップストリームを活用する作戦を採った。これはFP-3から練習していたもので、実はフェラーリは何年も前からモンツァではこの作戦を採ってきている。
問題となったQ3の最後は1周アタックのみであったため、フェリペ・マッサが前を走り、フェルナンド・アロンソがそのスリップの恩恵を受ける側に回った。しかしそれ以前の連続アタックの際には、先にアロンソ、次にマッサといったように、ラップごとに順番を入れ替えてスリップの使い合いをしていた。
その手順は以下のようなものだ。
まずマッサがコースインして前を走り、その後方をアロンソが走ってスリップを使いながらアタックに入っていく。そしてマッサは第2シケインのロッジア手前でイン側の左に避け、アロンソを先行させる。全開区間の最も長いセクター1だけでスリップを使う作戦だ。そして次のラップではマッサがアロンソのスリップを使いながらアタックを行なうという手順。
Q3の最後のアタックでは「フェリペが遠過ぎる!」というアロンソの無線が放送されたが、これはアウトラップでの交信(音声が放送に乗るのはリアルタイムよりも少し遅い)。その後にチームは2台のギャップを調整し、きちんとスリップが使えるようにしたという。アロンソもそれを強調し「フェリペに感謝している」と語っている。
マッサによれば、コーナーで前走車の乱気流の影響を受けず、直線でスリップストリームの空気抵抗削減効果が最大限に得られるのは、3〜4秒後方で走っている時だという。
「スリップが効くのは(前走車から)3〜4秒差くらいの時。それ以上に近付きすぎると(乱流でダウンフォースを失って)遅くなってしまう」
「僕はマーク(・ウェバー)の4.5秒くらい後ろにいて、なんとか彼のスリップを使おうとしていた。フェルナンドは僕の3.5秒後方にいた。僕はマークのスリップを充分に使える位置にいたし、フェルナンドも常に後ろにいたからね」
一般的に乱気流の影響は5〜6秒後方まであるとされるが、そこまで離れてしまうとスリップ効果が使えなくなるため、最良のバランスが得られるのが3〜4秒後方の位置だということだ。
(text by Mineoki YONEYA / photo by Wri2)