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マクラーレンの無線の秘密(2)

グリッド上でのテストが最も緊張の瞬間

2013-9-28 7:00


 マクラーレンのハイクオリティな無線通信を実現しているケンウッドだが、ヘッドセットだけでなく電波の送受信にも工夫がある。シンガポールのように電波障害の起きやすいところでは無線トラブルも少なくないが、ケンウッドの場合は指向性の高い電波を使用することで送受信範囲を的確に確保しているのだ。

 サーキットでアンテナの設置まで自ら担当しているケンウッドの村木進司エンジニアに説明してもらおう。



ーー電波の送受信はどのように行なっているんですか?
「発信・受信用の背の高いアンテナは、ヨーロッパラウンドだとトランスポーターの上に設置するんですが、シンガポールのようにフライアウェイの場合にはピットビルディングの屋上に設置します。これが大変なんです。ここだと屋上のアンテナからガレージ内の無線装置まで約70mのケーブルを這わせていますが、全て人力で設置しなければなりませんからね。ここはまだ良くて、(4階建ての)アブダビなんかは本当に大変ですよ。ですから火曜日に現地入りしてチームがガレージを設営するのと一緒に設置作業を進めます。去年なんて、やっと配線できたと思ったら断線が見つかって引き直し、なんてこともありましたね(苦笑)」

ーーシンガポールは無線が届きにくいことで有名ですよね。
「そうですね、パドックから見て一番奥になるターン7〜10のあたりが難しいですね。ホテルなどの高いビルがたくさんあるので、電波が跳ね返されてしまったり、携帯電話の基地局や業務用の電波の影響で妨害されてしまったり。火曜日・水曜日のうちに影響を受けない周波数を探してレース週末に使うものを決めて、スペアの周波数も決めておきます。
 スパ・フランコルシャンも厳しいですね。セクター2の山側よりも、オールージュの手前のように谷になっている部分に電波が届きにくいんです」



ーーそういう場合はどうやって対応するんですか?
「マクラーレンの場合は、電波に指向性を持たせることで対応しています。電波の進む向きを鋭くすることでピンポイントのエリアに届くようにして、それをいくつも設置するんです。ウチの使っているアンテナと他チームのものを見比べてみてもらえれば分かりますが、他チームは1本の高いアンテナから同心円状に広がるように発信するタイプですが、これだと届きにくいエリアが出てきてしまう。そこでウチは八木アンテナといって日本のテレビアンテナのように横棒がたくさんついたタイプにして、それぞれから指向性の強い電波を発信しているんです(写真奥のアンテナがマクラーレン。手前はフェラーリ)」

ーーイタリアGPではハミルトンの無線にトラブルが起きて、リセットしろという指示が出ていましたね。
「無線のトラブルというのは、クルマ側、受信側の両方で起こり得ます。何かトラブルが起きたら、まずは機材を取り替えて対応することになるわけですが、レースが始まってしまえばクルマ側の問題はもうどうすることもできません。リセットして直るとは限りませんが、できることというとそれくらいしかないんですね。
 ですから、グリッドでの無線チェックの時はいつもドキドキしますよ(苦笑)。ここでトラブルが見つかったら大変ですからね。レコノサンスラップに出ていく時というのが一番緊張する瞬間ですね」




(その3へ続く)



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