キミ・ライコネンの欠場が決まったロータスだが、その代役ドライバーはUSGPの週に入るまで決まっていない。
急な事態であるため、後任人事はある程度限られていると見るべきだろう。対象となるのは、リザーブに名を連ねるドライバー、エリック・ブリエのグラビティスポーツがマネージメントするドライバーか、現役のF1ドライバーになるだろう。
最有力はリザーブドライバーのダビデ・ダルセッキ。昨年のGP2王者であり、7月のシルバーストン・若手テストでもドライブしている他、2月の開幕前テストでも急病のライコネンの代役で半日走行を担当した。
シンガポールGPでライコネンが背中の痛みを訴えた際にも、チームは万一の事態に備えてバルセッキにステアリングドリルなどの準備を進めさせていた。今回も彼が起用される可能性は極めて高いだろう。
グラビティスポーツ所属のドライバーとしては、昨年イタリアGPで代役出場したジェローム・ダンブロシオや、7月の若手テストに参加したニコラ・プロストらがいる。ブリエにとっては彼らを育成し価値を高める絶好の機会だと言える。
ただし、気になるのはロータスがコンストラクターズランキング2位争いをしているという点だ。2位メルセデスAMGとは37点差、3位フェラーリとは26点差だ。財政難の彼らにとっては、ランキングが1つ上がることで得られる分配金の差は非常に大きい。
バルセッキが走るとなれば即戦力としての期待は難しく、実質ロマン・グロージャンのみでランキング2位を争うのは厳しい。ダンブロシオやニコラ・プロストなどの起用ではもっと苦しいだろう。
そこで、ニコ・ヒュルケンベルグを始め多くのドライバーが乗りたいと狙っているロータスのシートだけに、来季を睨んで現役ドライバーが電撃的に移籍ということもあり得るかもしれない。もちろん現所属チームとの契約がスムーズに解除できればという条件付きであり、ロータスと相手側チームとの間で何らかの取引が必要になるだろう。その状況によっては、2014年のシート争いに影響するような、アッと驚くような大きな動きが出て来るかもしれない。
クアンタムからの入金がいまだ実行されていない状況で、ロータスはどう動くか。ヒュルケンベルグを早期獲得しランキング浮上で資金を確保するか、クアンタムに見切りを付けてパストール・マルドナドを起用するか。それともバルセッキを起用して問題を先送りするか。
残り数日という期限の中で、彼らも頭を悩ませていることだろう。
(text by Mineoki YONEYA / photo by Wri2)