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【新車解説】ロータスE21

打倒3強を目指す隠れた野心作

2013-1-29 5:00
 

見た目は昨年からの正常進化型
しかし進化の秘密は車体後半部にあり?


 1月28日、ロータスはエンストンから『SKY SPORTS』とYouTubeの生中継で新車E21を発表した。僅か15分ほどのシンプルな発表会だった。

 E21は、テクニカルレギュレーションの変化が少ないことから前年型E20のコンセプトを踏襲した正常進化型となっている。全体のフォルムが与える印象は、トタルの増額を匂わせる赤色の面積が増えたこと以外には、昨年型からほとんど変わっていない。

 テクニカルディレクターのジェームズ・アリソンはこう語る。

「レギュレーションがほぼ同じなのでクルマも同じようなものになっている。しかしディテールはかなり異なっているし、F1ではこのディテールの詰めが大きくパフォーマンスに影響するんだ」

 各部のディテールを見ていくと、フロントウイングは昨年同様のものを装着。当然この時点ではごくコンベンショナルな仕様となっているが、テストが進むにつれて開発が進んでくものと思われる。ただし、仮にこうした昨年型と同系統のフロントウイングでテスト走行を開始するとなれば、空力コンセプト自体が大きく変わっていないということが分かる。

 ノーズも昨年同様にシャープな形状を採り、モノコックのバルクヘッド先にはステップを残している。今季はここにコスメティックカバーの装着が許されているが、アリソンいわく「重量が増えることになるからコスメティックパネルは装着していない。確かに付ければ見た目は良くなるだろうが、大切なのはダウンフォースを増やすことだ」とのこと。この段差は空力的な影響がほぼゼロに近く、パフォーマンスに影響しない無駄な部品を装着することは嫌ったところに、今季のロータスの本気度も見えてくる。

 フロントサスペンションはフェラーリを追随することなくプッシュロッドのまま。ステアリングラックも含めたジオメトリーに変化は無いように見えるが、昨年の躓きとなったモノコックへのブラケット強度はしっかりと確保されている。アップライト内側のブレーキダクトカバー周りの空力フィン処理も昨年同様だが、この辺りはフロントウイングの進化に合わせて開発が進められていくはずだ。

 写真ではノーズ下にバージボードは装着されていないが、CG画像には小振りなフィンが取り付けられている。いずれにせよ、このエリアもフロントウイングの開発によって進化の方向性が変わってくるはずだ。

 目新しいのはサイドポッド前端のポッドフィンで、ザウバーが先鞭を付けたポッド上までアーチを描く水辺フィンと、トロロッソが先鞭を付けたポッド上の2枚の垂直フィンを組み合わせたような、新しいフォルムを採用している。CGではこのポッドフィンは装着されておらず、代わりにリアビューミラーの後方に水平フィンが装着されていて、同じような機能を持たせようとしている。このエリアにはいくつもの開発アイテムが試されていたことを窺わせる。

 いずれもこれはサイドポッド上からリアエンドに向けての気流を剥離させないよう流し込むためのアイテムであり、昨年末になっても他チームを模倣することのなかったロータスが導入するということは、このマシン後半部の気流制御コンセプトが少なからず書き換えられたということだ。

 最も注目すべき点がそのリアエンドの空力処理だ。昨年終盤戦でトライしたコアンダ型の排気管を導入。コークボトル部のフォルムはマクラーレン型としてワイドにせり出させ、内側にトンネルを形作ろうとしている。しかし排気管の後端部はレッドブル型のようにフロア近くまで低く落とし込まれている。ここに新たな解釈を見出したのかもしれない。

 ドライバーのコメントによれば、昨年の時点でロータスでは、コアンダ型排気管は「メリットもあるがデメリットもある」という結論が導き出されていた。それはスロットルオンで排気時のダウンフォースは増えるものの、スロットルオン時とオフ時のダウンフォースバランスの変化がハンドリングに悪影響を与えるという点と、変化曲線が急激過ぎるという点。しかし今季はコアンダ排気管の搭載を前提に開発することで、その悪影響を最小限に留めることに配慮しているはずだ。また、エンジンパワーが失われるというデメリットもあったが、それもカウル内部の排気管取り回しを工夫することで最大限に対処してきているはずだ。

 昨年後半戦にトライを繰り返していたパッシブ方式のダブルDRSについては、搭載していない。しかしCG画像には昨年同様のインダクションボックス両脇のエアインテークが装着されており、実走テストでは搭載してくる可能性もあるだろう(もっとも、これはハイドロリック用ラジエターのためのエアインテークである可能性が高いが)。

 リアサスペンションは昨年同様のプルロッド。しかしトラクションが向上し熱によるデグラデーションも大きくなった今季のピレリタイヤに対応するため、リアサス周りには慎重な開発が加えられているはずだ。おそらくはカウル内部のギアボックスにマウントされたダンパーシステムに何らかの工夫が加えられているだろう。

 リアウイングやディフューザー周り、リアタイヤ内側の整流フィン周りは、昨年同様のものがそのまま装着されている。当然のことながら、発表会用のダミーだ。排気管の手法を一新した彼らだけに昨年同様の手法を使うことは考えにくく、さらに今季のタイヤは形状も異なり空力的な影響も及ぼすため、このエリアの開発も積極的に進められていくだろう。

 まずは予想通り、正常進化型の姿を見せたロータスE21だが、実際にはそのマシン後半部は新たなコンセプトを採用している。その全貌はテストを追うごとに明らかになっていくはずだ。"3強喰い"をターゲットとして明言する彼らだけに、E21にはその外観以上に野心が秘められている。

(text by Mineoki YONEYA / photo by Lotus)


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【LOTUS E21 SPECIFICATIONS】
Chassis
カーボンファイバー&アルミハニカム・コンポジットモノコック
ロータスF1チーム社製

Front Suspension
プッシュロッド式(トーションバー&ダンパーユニット使用)
OZ社製マグネシウム鍛造ホイール

Rear Suspension
プルロッド式(トーションバー&ダンパーユニット使用)
OZ社製マグネシウム鍛造ホイール

Transmission
7速セミオートマチック・チタン製ギアボックス
クイックシフト機構使用

Fuel System
ATL社製ケブラー強化ラバータンク

Cooling System
潤滑油用・冷却水用各ラジエター(サイドポッド配置)

Electrical
MES-Microsoft社製・標準ECU

Braking System
カーボン製ディスク&パッド、APレーシング社製キャリパー
APレーシング&ブレンボ社製マスターシリンダー

Cockpit
カーボンコンポジット製取り外し式ドライバーシート
6点もしくは8点式シートベルト
ステアリングホイール(ギアシフト、クラッチパドル、DRS操作含む)

KERS
ルノースポールF1社製モータージェネレーターユニット
マネッティマレリ社製電子制御ユニット

Dimensions and Weight
Front Track: 1450 mm
Rear Track: 1400 mm
Overall Length: 5088 mm
Overall Height: 950 mm
Overall Width: 1800 mm
Overall Weight: 642kg(ドライバー、カメラ含む)

RS27 - 2013 Engine
Designation: RS27-2013
Configuration: 2.4L V8
No. of Cylinders: 8
No. of Valves: 32
Displacement: 2400cc
Weight: 95kg
V Angle: 90°
RPM: 18,000
Fuel: Total社製
Oil: Total社製
Power Output: 750 bhp 以上
Spark Plugs: Semi surface discharge
Ignition System: High energy inductive
Pistons: Aluminium alloy
Engine Block: Aluminium alloy
Crankshaft: Nitrided alloy steel with tungsten alloy counterweights
Connecting Rods: Titanium alloy
Throttle System: 8 butterflies
 

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