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【2014年ニューマシン解説】

マクラーレンMP4-29、革新は前後にあり

2014-1-25 0:20


 1月24日、マクラーレンは全10チームの先陣を切って2014年型マシンの全貌を明らかにした。CGを先行公開したフォースインディアやウイリアムズとは異なり、彼らはMP4-29の実車をオンラインで公開している。

 噂された新タイトルスポンサーの獲得は断念し、マシンはシルバー基調のシンプルなカラーリングとなった。サイドポッドやリアウイングといった最も広告効果の高い箇所に描かれたのも、車名のMP4-29という文字のみだ。しかしホンダとの提携もあり、昨年前半までの資金的な不安は一掃されている。

 このMP4-29は、デザイン・開発ディレクターのニール・オートレー、テクニカルディレクターのティム・ゴス、そしてザウバーから加入したエンジニアリングディレクターのマット・モリスという技術陣の元で開発された。昨年大きな不振を味わったマクラーレンは、極めて意欲的なマシンを作り上げてきている。



 やはり一見してノーズが目を引くが、規定を満たすために中央部は低く伸ばしているが、左右ステーは大きく広げ、ノーズ下に気流をしっかりと取り込もうという姿勢が見える。ウイングステーで気流のトンネルを形成した上、ノーズ側面には整流フィン処理を加えてフロントの気流制御を図っている。

 フロントウイング自体も斬新さが覗く。フロントタイヤ周りの気流制御に大きな影響を持つ翼端板は、一見するとシンプルな形状に見えるが、実際には下部が浮いた状態でスリットになっており、外側へと気流を導く構造だ。アッパーフラップ内側もアグレッシブな形状に進化している。



 フロントサスペンションは昨年型で導入したプルロッド式を諦め、プッシュロッド式に戻してきた。新規定によってノーズが下がったことでサスペンションのマウント位置が下がったことも影響したものとみられる。上下ウィッシュボーンはほぼ水平にマウントされ、ジオメトリーは完全に一新。ステアリングアームはロワウイッシュボーンとツライチで、整流を意識した空力形状を採っている。そもそもマクラーレンはハイノーズ全盛の中で2012年までローノーズ哲学を採っており、今季規定のモノコックでのフロントサスペンションには一日の長があるはずだ。

 サイドポッドは開口部が大型化しているものの、アンダーカットはしっかりと確保してサイドポッド脇からリアエンド内側への気流にも配慮している。コクピット脇には排熱ルーバーが設けられ、新型パワーユニットの冷却に配慮しながら空力性能の追求に腐心している様子もうかがえる。



 リアカウルはパワーユニットが収められた中央部が大柄で、ギアボックスからリアエンドまで幅広のまま伸びて、リアエンドは左右二股に別れている。エンジンカウル内の排熱処理なのか、センター配置が義務づけられているエンジン排気管を左右幅広形状としているのかは不明だが、リアのグラマラスなフォルムからは従来とは異なる空力思想が感じられる。コクピット頭上のエアボックスが大型化して上下2段に分かれていることから、内部の気流取り回しに何らかの工夫があるのかもしれない。

 リアサスペンションも大幅に変更され、プルロッド式を踏襲してはいるものの、アップライト内側の空力処理をよりいっそう進化させている。公開された写真では詳細に確認できないが、ロワアームとトーアームがリア衝撃構造にマウントされ、リアエンドに大きく張り出している。これはリアのロワウイングが禁止となったことを受けて、これに代わってディフューザーの効果を向上させるための整流効果を持たせるためではないかと推測される。リアウイングも翼端板下のスリットを大型化させるなど、リアエンドの空力処理変更に合わせてすでに昨年型とは設計手法を変えている。



 一部メッシュの貼られた開口部が確認できるブレーキダクトも、ウイング形状の斬新なフォルムに進化している。昨年のマクラーレンの不振の原因は、フロア下の気流制御が上手くいかずにリアエンドの上下動がスムーズに抑えられなかったせいだが、このリアアップライト周辺の空力開発を進めることで解決を目指している。

 2014年はパワーユニットの変更により大きな変化がもたらされたF1だが、マクラーレンはそれだけに留まらずフロント・リアともに空力面でもメカニカル面でも大きく設計コンセプトを変え、斬新なマシンを作り上げてきた。このマシンがどんな走りで昨年の不振を払拭してくれるのか、非常に楽しみだ。

(text by Mineoki YONEYA / photo by McLaren)


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