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【新車解説】ザウバーC32

斬新アイディアでマシン後半部を刷新

2013-2-3 7:27

正常進化型を名乗るものの
極小サイドポッドを軸に大幅な刷新


 ザウバーはこれまでとはイメージを一新するカラーリングで会場を驚かせた。チームのイメージカラーであるグラファイトを、これまでのようにマシンの一部だけでなく、マシン全体のベーススキームとしてきたのだ。

 チームとしては前年型C31がジェームズ・キーが残した作品であり、テクニカルディレクター不在の3巨頭体制で作り上げる初めてのマシンとなった。空力部門とメカニカル部門の両責任者と、チーフデザイナーの3人による協議制だが、最終的にはマット・モリスがテクニカルディレクターに近いポジションに就いていると言うべきだろう。

「C31は多くの長所を持った非常にコンペティティブなマシンだった。C32の開発目標は、その長所を強化すると同時に、弱点を潰すことだった」

 モリスがそう語り、C32は前年型のコンセプトを踏襲して開発された正常進化型だと言う。カラーリングこそ大幅に異なるが、マシンの目指すべき方向性は変わらない。

 フロントウイングは前年後期型を暫定的に使用し、ノーズには段差が残り、ノーズコーン底面の後端からモノコック上に気流を抜くスリットも健在だ。フロントサスペンションはプッシュロッド式を継続しており、マシン前半部分の変化はほとんどない。

 独創的なのがサイドポッドで、横幅が従来の半分ほどしかない。ポッドフィンの形状が独創的に見えるが、それは横幅の短いサイドポッドがそう見せているだけのことなのだ。

 これは2011年モナコでの事故で破損したサイドポッドと衝撃吸収構造を見て思いついたものらしいが、空力的なメリットと重量削減のメリットがあるようだ。特にC31はレギュレーションの最低重量と同等かそれよりもやや重いくらいだったとみられ、C32の開発課題のひとつとして軽量化が挙げられている。また、サイドポッドの形状変化に伴い、カウル内部のラジエター配置も完全に見直されている。

 ロールフープ後方には交換可能なパネルの箇所があり(oelikonのロゴ周辺)、これはダブルDRSの搭載を想定したものと考えられる。ホモロゲーション後のモノコックの設計変更は認められないため、今後の開発計画も踏まえてこのような含みを持たせたデザインになっているのだろう。

 極めてコンパクトになったサイドポッド後端は、昨年型とはガラリと変わってマクラーレン型のコアンダ排気管としてきた。自らが先鞭を付けた方式を捨てた格好だが、排気管自体の位置は変わっておらず、排気管よりもコークボトル部の床面近くを流れる気流制御の手法を変えてきたとみるべきだろう(おそらくはサイドポッド前端の形状変化に伴って)。

 それに呼応するように、リアサスペンションの設計も完全刷新して、リアエンドに抜ける気流の流れにも配慮している。リアウイングの翼端板にはこれまでになかったエンボス加工が施されて、マシン後半部の気流制御手法を大きく変えてきたことを感じさせる。

 エンジンとギアボックス内部構造、KERSは今年もフェラーリ製。パワー不足とシームレス機構のロスの大きさが悩みの種だが、2014年に向けてエンジンサプライヤー変更は考えていないといい、我慢のしどころかもしれない。KERSは昨年型をベースにしたものだが、本家と同様に小型軽量化が進んだという。

 正常進化型とはいいながらも斬新なアイディアを取り込みマシン後半部を大幅に変えてきたザウバーは元来、限られた予算の中で質実剛健を旨としながらも、時に斬新な空力アイディアを編みだし昇華させてきたチームだ。開幕までにまだ隠し球も用意しているはずで、これから先の進歩からも目を離すことはできないだろう。

(text by Mineoki YONEYA / photo by Sauber, Wri2)

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【SAUBER C32 SPECIFICATIONS】
Chassis carbon-fibre monocoque
Front suspension upper and lower wishbones, inboard springs and dampers activated by pushrods (Sachs Race Engineering and Penske)
Rear suspension upper and lower wishbones, inboard springs and dampers actuated by pullrods (Sachs Race Engineering and Penske)
Brakes six-piston brake callipers (Brembo), carbon-fibre pads and discs (Brembo)
Transmission Ferrari 7-speed quick-shift carbon gearbox, longitudinally mounted, carbon-fibre clutch
Chassis electronics MES
KERS Ferrari
Steering wheel Sauber F1 Team
Tyres Pirelli
Wheels OZ

Dimensions
length 5.240 mm
width 1.800 mm
height 1.000 mm
track width, front 1.495 mm
track width, rear 1.410 mm
Weight 642 kg (incl. driver, tank empty)

Ferrari 056 engine
Type naturally aspirated 8-cylinder, 90° cylinder angleel 90 Grad
Engine block sand-cast aluminium
Valves / valve train 32 / pneumatic
Displacement 2.398 ccm
Bore 98 mm
Weight > 95 kg
Injection and ignition Electronic injection and ignition

 

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