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【新車解説】メルセデスAMG W04

弱点の空力性能、粛々と熟成を進める

2013-2-4 23:50

フロントウイングにコアンダ排気管
前後に隠した空力熟成の実像とは?


 メルセデスAMGが2月4日にヘレスで発表したF1 W04は、ライバルたちと同じように前年型を正常進化させたマシンだった。他マシン以上にこれといった特徴のないコンサバティブなマシンとも言える。

 ロス・ブラウンを筆頭に4人ものテクニカルディレクター経験者を擁したメルセデスAMGは、この技術体制で迎える2年目。完全に白紙から作り上げるたのは初めてのマシンとなる。エンジニアリングディレクターのアルド・コスタが全体の指揮を執り、テクニカルディレクターのボブ・ベルがこれを補佐、ジェフ・ウィリスはテクノロジーディレクターとして主に空力部門を中心としてより実務的な作業を管轄している。ブラウンによれば、技術体制の熟成が進み、その強みがF1 W04の開発に存分に生かされたという。

 前年型の最大の弱点であった空力性能の熟成が、F1 W04の開発主眼だ。

 発表会時点では昨年型のフロントウイングを装着しているが、実走テストでは新型のフロントウイングを投入することをすでにチームは認めている。

 ノーズは小さなコスメティックパネルを装着してステップフォルムを僅かに残し、ノーズ下の整流フィンなども前年型同様で、フロントサスペンションはプッシュロッド式を踏襲。フロントのコンセプトに大きな変化は見られない。ノーズのステップに関しては、この手法によって僅かに空力的ゲインが風洞では確認できているという。

 ミラーの後方に3枚構成の整流フィンが加わり、サイドポッド上にも整流フェンスを追加。ポッドフィンはシンプルな形状ながら、下半分が幅広となり大きく内側に折り曲げられている。そしてサイドポッド全体が内側にえぐり込まれていることも分かる。

 サイドポッド後方は前年型と大きく異なっている。コアンダ排気管を軸としたこの変化こそ、フロントウイングと双璧をなすF1 W04の開発主眼のひとつだ。

 低く落とし込まれたサイドポッド後方に、排気管は従来よりも低い位置に設置されている。その下には明確にコークボトル部に向けたトンネルを形成。リアカウルの後端は峰が高くそびえ、マシンの左右気流を分割してリアエンドへと流し込む。空力性能を高めるために低くコンパクトにパッケージングしたリアエンドこそが、F1 W04のキーポイントと言えそうだ。発表会でもマシン後方は撮影させまいと鉄壁のガード体制を敷いていた。これからさらに隠し球が出てくる可能性も否定できないだろう。

 リアウイングにも現時点では変化は見られず、リアサスペンションはプルロッド式を踏襲している。しかし昨年苦しんだタイヤライフとパフォーマンス引き出しのためにジオメトリーに改良が施されている。

 一見して外観上は極めてコンサバティブなマシンに見えるが、その実、リアエンドには攻めの姿勢も垣間見える。メルセデス本社としては2014年のトップ浮上は至上命題であり、場合によっては2013年を犠牲にした開発も強いられかねないだけに、今季は開幕ダッシュが鍵となる。開幕戦までにいかにさらなる空力パフォーマンスの熟成を果たせるか、新技術体制の真価が問われることになる。

(text by Mineoki YONEYA / photo by MercedesAMG, Wri2)

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