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【新車解説】トロロッソSTR8

新体制による開発、中身は100%刷新

2013-2-5 8:23

外観上の違いに派手さはなくとも
内部は完全刷新、新体制による第一歩


 トロロッソのニューマシンST8は、外観こそ極端な変化はないものの、実際には新たな技術体制の元で生まれ変わったチームの再出発を象徴する、完全新設計マシンだ。

 ザウバーから移籍した新テクニカルディレクターのジェームズ・キーに目が行きがちだが、彼が加入したのは昨年9月。マシンはすでに2012年3月から開発が始まっており、この時点では6割方の設計が終わっていたという。つまり、彼がその手腕を発揮することのできる領域は限られていたのだ。

 実際にマシン開発の主軸となったのは、2011年12月に加入しチーフデザイナーとなったルカ・フルバート。発表会でもキーに並んで記念撮影に参加していることからも、その影響力の大きさを計り知ることができる。

 開発に主眼が置かれたのは、STR7の弱点であったセットアップ幅の狭さの解消。STR7ではこの問題のために特定の箇所に合わせ込むといったピンポイントのセッティングができないことや、タイヤのタレの大きさにも悩んでいた。これは主に重量配分の調整幅が狭いことにあり、簡潔に言えば軽量化とバラスト搭載位置の選択肢増加を推し進めたことになる。

 また、もうひとつの開発主眼がサイドポッドだ。昨年までは特徴的なダブルデッキとも言える、下部の絞り込みを持った形状をしていたが、これによって内部のラジエターなどが特殊な配置を余儀なくされ、そのためにシーズン中の開発が著しく制限されてしまい、空力性能を向上させることができなかった。

 この状況を改善すべく、STR8では一般的な形状のサイドポッドに戻し、ラジエターを低くマウントすることで低重心化にも寄与している。そしてサイドポッドのデッキは後方をアグレッシブに低く落とし込んでいる。

 プルロッド式のリアサスペンションやコアンダ排気管は昨年同様の手法を採用しているが、リアエンドはコンパクト化を前提に真っ先に再設計が行なわれており、加えてシーズン序盤でさらにアグレッシブな開発を予定しているという。

 ダウンフォース増強を掲げている空力開発は、風洞と空力部門はイギリスのビスターに置き、CFDを含めそれ以外の開発部門のあるファエンツァの自社ダクトリーを連携して開発にあたってきた。キーは1週間のうち2〜3日をイギリスで過ごしイタリアとの間を行ったり来たりして両者を統括している。トロロッソは技術体制で完全に新たな次元へと移行し、その第一歩がこのSTR8なのだ。

 キーいわく「外観は似ているが、中身は全く前年型とは違う」という。ST7からのキャリーオーバー(流用)パーツはステアリングのみということからも、それは分かる。一見すれば変化は少ないように見えても、その内実は大きく変化している。新たな道を歩み始めたトロロッソを象徴するマシン、それがSTR8なのだ。

(text by Mineoki YONEYA / photo by Toro Rosso, Wri2)

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【TORO ROSSO STR8 SPECIFICATIONS】
Official car name: STR8
Engine: Ferrari V8 Type 056
Chassis material: Composite monocoque structure
Bodywork material: Carbon fibre composite
Front suspension: Upper and lower carbon wishbones, torsion bar springs and anti roll bars, Multimatic dampers
Rear suspension: Upper and lower carbon wishbones, torsion bar springs and anti roll bars, Multimatic dampers
Steering: Scuderia Toro Rosso
Gearbox: Seven-speed hydraulic
Clutch: Sachs Triple-plate pull-type
Calipers: Brembo
Pads and discs: Brembo
Cooling system (radiators, heat exchangers): Scuderia Toro Rosso
Cockpit instrumentation: Scuderia Toro Rosso
Seat belts: OMP / Sabelt
Steering wheel: Scuderia Toro Rosso
Driver's seat: Carbon fibre construction, moulded to driver’s shape
Extinguisher system: Scuderia Toro Rosso/FEV
Wheels: Apptech
Fuel cell: ATL
Overall weight: 642 kg (including driver and camera)
 

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