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【ヘレステスト初日レポート 1】

バトンがトラブルも驚速トップタイム!

2013-2-7 1:34


 2月5日、スペイン南端のヘレスでついに2013年オフシーズンテストが始まった。全11チームが参加し、ウイリアムズ以外の10チームがニューマシンを走らせる。まずはその基礎的なポテンシャルをはかる場としての位置づけだ。

 朝9時の気温は6.4度、路面温度は8.9度。時間の経過とともに上昇して、この日の最高気温は18度、路面温度は26度前後まで上がった。しかしタイヤテストとしては充分な環境とは言い難い。



 9時31分には僅か3周の走行でジェンソン・バトンがターン4で止まり、赤旗提示。燃料ポンプのトラブルで、ガレージに戻されたマシンはその後、長時間にわたって台の上で作業を施されることになった。

 10時23分にはニコ・ロズベルグがターン13のランオフエリアにストップ。マシン後方からは僅かに白煙が上がっていたが、電気系統のトラブルで、配線に手直しが必要と判断されてこの日の走行はこれで取りやめとなった。メルセデスは前日にデモ用タイヤで100km未満のフィルミング走行を行なったとはいえ、本番仕様のタイヤを履いたこの日はわずか14周に留まることとなった。

 各チームともまずはマシンのシステム確認と信頼性確保のための走行。午前中の段階でトップタイムはダニエル・リカードの1分20秒547だったが、午後に入ってからロマン・グロージャンが1分19秒台に突入し、14時20分からコース復帰を果たして2周ずつの確認走行を行なっていったバトンが、15時29分から連続走行を開始し、瞬く間に1分18秒861というこの日のベストタイムを叩き出した。

 ライバルたちが呆気にとられるようなタイムであり、コース上を走るのを目撃したカメラマンたちも「驚くほど回頭性が良く、見た目で分かるほど速かった」と証言している。

 ただし、走行後のバトンの表情は硬かった。初日トップのドライバーに詰めかけた報道陣に対して、いつもの冗談交じりの軽快なトークは鳴りを潜め、真剣な表情でジェスチャーを交えながら、諭すように語りかけた。

「テスト初日のタイムになんて何の意味もないんだ。最も重要なのは、フィーリングが良いと感じられるかどうかなんだ。滑り出しとしては上々のフィーリングだったよ。シミュレーション通りの性能が出ているのが確認できたこと、それが重要だね」

 その表情と声色から感じられたのは、この驚異的ベストタイムは決して手放しで喜べるようなものではないのではないかということだ。



 2番手タイムを記録したのはレッドブルのマーク・ウェバーだったが、こちらも表情は険しかった。マシンの第一印象を聞かれて「フィーリングは昨年型とほとんど変わっていないし、とても気持ち良く走れている」と語ったものの、その言葉の内容はとても表情と一致するようなものではなかった。話を進めていくうちに、ウェバーはその不機嫌さの理由を暗に示した。

「今日はクルマがすごく……アンダーステアだった。今夜のうちになんとかクルマをレスポンシブル(反応性の良い状態)にしなければならない」



 一方でいつもと変わらない明るい表情を見せたのが、3番手タイムを記録したロマン・グロージャンだった。「第一印象のフィーリングは良いし、去年型とそんなに大きく変わっていない」とポジティブな印象を語った。

 フェラーリのフェリペ・マッサは6番手タイムで終えている。シミュレーション技術のコラレーションに不安を抱えるフェラーリだけに、まずは気流センサーなどを用いた基礎的なデータ収集に専念していたせいもある。

 「クルマのフィーリングはポジティブだし、去年のマシンとは別次元の速さがある。マシンバランスが良いし、特にリアのトラクションは"良い方向"に進んでいる」と語るが、口癖の"Good direction"を発していることを考えるとその証言にはやや疑問の余地もある。

「期待していたほど多く走れなかったけど、新車ではつきものだ。クルマを理解するためにはまだやらなければならないことが山積みだ」といい、不安はありながらも、初日の走行がタイムを考慮したものではないことも分かる。



 15時43分には、新人マックス・チルトンがバックストレートエンドのターン6でスピンオフし赤旗を出した。リアサスペンションのトラブルによるものだったが、本人は新人らしからぬ落ち着きを見せていた。

「午後になって初めてプッシュし始めてクルマの限界を試す場面になったら、全開でいったあそこでリアサスが壊れたんだ。でも良いフィーリングだったし、午前中には去年型より良くなっていることは確認できた。明後日もう一度プッシュするのが楽しみだよ」



(text by Mineoki YONEYA / photo by Wri2)




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