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小林可夢偉、シーズン前半戦の「苦闘」と「快走」を語る。


2010-7-6 4:15
「前半戦は40点、落第です。こんなんじゃ喜ばれへん。」

 所々、黒く汚れたレーシングスーツの前をはだけながら、可夢偉は真っ直ぐに歩いてきた。バレンシアの強い陽射しに照らされ、額にうっすらとにじんだ汗が光る。頬にはまだ、バラクラバの跡が生々しく残っている。その可夢偉の表情は、まるで取り柄のないレースでもした後であるかのように、淡々とし、頬が緩むことはなかった。

 18番手グリッドという絶望的なスタートから、セーフティカーを利して3位へ。タイヤ無交換で50周以上も走るというのがギャンブルに他ならないことを、チームは重々理解していた。だが可夢偉は腕尽くで運を手繰り寄せた。ジェンソン・バトンのマシンを従え、3位を守り抜いた。それどころか、残り2周で身震いするような素晴らしいオーバーテイクを見せた。見る者の心を揺さぶり、強く惹き付けるような走り。

 だが、可夢偉はチームスタッフの歓迎に応え抱き合いながらも、決して破顔することはなかった。

 俺が目指すのは7位なんかじゃない。可夢偉の背中は、そう語っていた。


――セーフティカーの戦略が上手くいきましたね。

「僕とペドロ(・デ・ラ・ロサ)で戦略を分けてて、(順位が前の)ペドロに戦略のプライオリティがあったんで、僕がステイアウトすることになるのはレース前から間違いなく決まってたことやったんです。ただ、あそこでタイヤが上手く機能してくれたっていうのがカギやったんですよね。良いペースを最後まで維持できて、バトンを抑えきって。
 あそこでタイヤを壊してたらこんなポジションにはならなかったはずですからね。上手くタイヤをマネージメントできて、50何周までもったっていうのがキーポイントでしたね」

――セーフティカー中のペースが問題になりました。ペナルティが5秒加算のみで順位は変わりませんでした。

「まぁ、それはあまり気にせずに。ここまでこれたっていうことが重要なんで。いや、僕は言われたペースを守ってたんですけど、後ろがすごく迫ってきたりして。チームにも無線で『これ、守らんでええの?』って聞いて、ルール上は守らなあかんって聞かされてたんで、僕はしっかり守って走ってましたよ」

――バトンを抑えて40周も走るというのはどうでした?

「いや、あんまり意識はしなかったですよ。ただ、間違いなく向こうの方がクルマが速いっていうのは分かってたんで、そのペースに惑わされないようにせんとな、っていうのだけは気をつけて。あの場面では、自分のペースでタイヤをマネージメントするかっていうのがすごくポイントやったんで。そういう意味では、タイヤのことだけを考えて、ミラーはあんまり見ずに走ってましたね。
 そりゃ、プレッシャーは感じましたよ。レースが再開されてからはほとんどずっとそうでしたね。でもここは抜きにくいサーキットやからね」

――バトンとの差は、ある程度コントロールできていた?

「あんまりオーバードライブはできないし、かといって近付きすぎたらちょっとミスしただけでも抜かれるし。だから後ろとのギャップを見ながら走ってましたね。とりあえず、あんまり無理せずに」

――予想以上にペースが良かった。

「僕自身もビックリしてたんですけど。バトンも全然追いついてこなくて。『もしかしたら、もしかするかもな』と思いながら走ってました。ただ、そこでオーバードライブせずに上手くタイヤをコントロールして、最後までもたせるっていうのが一番大事やったんで。それが上手くいったんが良かったですね」

――これだけのペースで走れた理由というのは?

「……(続く)」

(text by Mineoki Yoneya / photographs by Wri2, BMW Sauber)



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【特別寄稿】『小林可夢偉、前半戦の苦闘と快走を語る。』

● ヨーロッパGPでの3位快走中、どんな気持ちだった?

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ヤクルトが好き。だけど・・・?

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商品の詳細
著者:米家 峰起
レース:2010年第9戦ヨーロッパGP
ページ数:41
ファイルサイズ:26.7MB
商品番号:ITEM2010-0118
価格:150円(税込)


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