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2010年第11戦ドイツGP、『過ぎ去りし時間は、ホッケンの森へ』


2010-7-26 18:07
 かつて幾多のF1マシンが時速350kmで駆け抜けた旧コースの遺構は、鬱蒼と茂る森の中に消えゆこうとしていた。アスファルトは朽ち、植林がなされ、その姿はほとんど窺うことはできない。僅かに木々の「段差」が形を残すのみ。
 2002年に大改修がなされて以来、すでに8年もの歳月が過ぎようとしているのだ。時代は変わりゆく。

 優勝候補のセバスチャン・フェッテルでもなく、地元の英雄ミハエル・シューマッハでもなく、跳ね馬の二人がこの週末の主役になろうとは、誰が想像しただろうか。スタートシグナルが消える瞬間まで、誰にも分からなかった。

 レーシングライン上には予想以上のラバーが乗り、レッドブルのエンジニアが想像したよりも遥かに高いグリップ力が生じていた。セバスチャン・フェッテルがクラッチパドルを戻した瞬間、彼のRB6のリアタイヤは路面を蹴り出すことができず、逆に押し戻されて前に進むことができなかった。

 その間に、両脇から赤い跳ね馬の二台がすり抜けていった。フェッテルがフェルナンド・アロンソをけん制すべく右にステアリングを切ったことで、前の空いたフェリペ・マッサが真っ直ぐ1コーナーへ飛び込んで首位に立った。

 マッサとアロンソの構図は、ピットストップを終えてもなお変わらない。この週末のフェッテルには、追い付き追い越すだけの優位はない。数戦前から力を伸ばしつつあったフェラーリが、ついに牙を剥いた。

 そのままレースが終わるかと思われた49周目に、事態は思わぬ展開を見せた。

「フェルナンドの方が、君より、速い。分かったかい? 理解したら返事をくれ」

 レースエンジニアであるロブ・スメドリーの声が無線で届いた直後、マッサはターン6の立ち上がりで露骨にスローダウンしてアロンソを先行させた。優勝を逃すのが自身の落ち度でないことを誇示するかのように。(続く)

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(text by Mineoki Yoneya / photographs by ZEROBORDER)


『F1SCENE DIGITAL』vol.11(2010 Rd.11 ドイツ)

●チームオーダー疑惑の末のフェラーリ1-2フィニッシュ

●今季2勝目を上げたフェルナンド・アロンソの走り

●母国観衆の大声援を受けたフェッテルとシューマッハ

●レースドキュメント『過ぎ去りし時間は、ホッケンの森へ』

●小林可夢偉・連載『深い森の中に消えた1ポイント』


『F1SCENE DIGITAL』は、F1ドキュメンタリー写真集『F1SCENE』が贈る、レースごとの写真集です。vol.11は、2年ぶりの開催となったホッケンハイムでのドイツGP。チームオーダーに揺れた決勝、シューマッハの母国GPはどうだったのか? 叙情詩的なレースドキュメント、小林可夢偉の連載『夢に向かって』も収録。レースリザルトも掲載し、レース資料としても役立ちます。

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