騒然とした雰囲気の中で始まったドイツGP決勝後のトップ3記者会見は、紛糾した。フェラーリの二人とチームの行為を糾弾し一歩も引かない記者たちと、眉間をしかめ厳しい表情のまま反論するフェルナンド・アロンソとフェリペ・マッサたちとのやりとりは、まるで公聴会や国会の証人喚問を見るかのようだった。
――現実問題として、あなたはコース上で彼を抜くことができなかった。だからチームにそれを依頼しなければならなかったのではないですか、フェルナンド?
「それはあなたの意見でしょう?」
――私はあなたの意見を聞いているんです。あなたはそうは思わないのですか?
「No.」
――フェリペはあなたにこの勝利を譲らなければならなかった。違いますか?
「No.」
椅子の背もたれに身体を預け、上半身を起こして口をマイクに近付けて「No.」とだけ答えるアロンソ。当人たちも嫌気がさし、隣に座っていたセバスチャン・フェッテルが「僕はもう帰って良いかな?」と苦笑するほどだった。
事件が起きたのはレースが終盤に入ろうかという49周目だった。
スタートで首位に立ち、スーパーソフトからハードタイヤに換えてからも好ペースを維持し首位をひた走っていたマッサが、そのまま今季初優勝を飾るのかと思われた。
だがマッサのエンジニア、ロブ・スメドリーが無線でマッサに伝えた。
「聞いてくれフェリペ。フェルナンドの方が、君よりも、速い。このメッセージの意味をしっかりと理解してくれ」
一語一語、ゆっくりと区切って明瞭に。2002年オーストリアで当時の代表ジャン・トッドがルーベンス・バリチェロに語りかけた「チャンピオンシップのため、マイケルにパスさせてくれ」という言葉の響きと似ていた。チームオーダーを禁止する規定ができるきっかけとなった、あの事件だ。
イタリアメディアの中では、その瞬間からそのメッセージがチームオーダーを意味する符牒だと騒ぎ立てられた。そしてマッサは、ターン6の立ち上がりでスロットルを緩めてアロンソを先行させた。自らのペースが遅くて抜かれるのではなく、あくまで「譲ってやった」、もしくは「譲らされた」のだと言わんばかりの行動だった。
スメドリーからは「OK、良い子だ。そのまま行ってくれ……すまない」という声がかけられた……(
つづく)
(text by Mineoki Yoneya / photographs by Wri2)
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【特別寄稿】『疑惑と追及に揺れた、フェラーリの完全優勝』 ●ホッケンハイムを揺るがした、チームオーダー騒動のすべて
●『フェルナンドの方が、君よりも、速い』
●レッドブルのような失態は、避けたかった。
●チームオーダーは本当に悪か?
この記事の詳細はこちら商品の詳細著者:米家 峰起
レース:2010年第11戦ドイツGP
ページ数:17
ファイルサイズ:12.0MB
商品番号:ITEM2010-0148
価格:150円(税込)
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