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2010年第14戦イタリアGP、『モンツァに刻まれ続ける、イタリアの誇り』


2010-9-16 12:50


 遥か地の果てまで続きそうなモンツァの長いホームストレートを、大観衆が埋めて真っ赤に染めた。その上空に浮かぶ表彰台の頂点に立つのは、跳ね馬の騎士。スペイン国歌に続いて鳴り響くイタリア国歌に、大観衆が地響きにも似た唸りを上げる。

 その情景を見れば、これのグランプリがイタリアのために存在するものなのだと思い知らされる。霞んで見えない第1シケインから、背後のパラボリカまで、次々と押し寄せる人の波が歓喜に震えている。

 フェラーリという存在、跳ね馬の紋章は、この国の人々にとって憧憬の存在であり、誇りでもある。人々の願いや思いを昇華し、栄光をもたらすからこそ、深紅のマシンは燦然と輝いて見える。跳ね馬の騎士たちは、英雄と崇められる。

 鬱蒼と木々が生い茂る公園の中に、アウトドローモ・ディ・モンツァはある。かつて使われたバンクの遺構が今も残り、90年にもならんとする伝統と歴史を湛えている。たった6つのコーナーを長い直線で結んだだけのコースレイアウトは、かつてのモーターレーシングの姿を思い起こさせる今では貴重な存在となった。

 F1マシンたちは薄いウイングを纏い、他所では見ることのできない速度で長い直線を駆け抜ける。カーブから飛び出て、驚くような速さで次のコーナーへ消えていく。そのシルエットは変われども、古き良き時代を感じさせる数少ない場所であり続けている。

 9月を迎えたモンツァの森には、ひんやりとした空気がただよっている。相変わらず陽射しは強いが、木々に覆われたコースサイドはもう秋の気配が感じられる。3月に幕を開けたチャンピオンシップは、すでに終盤戦へと向かい始めている。

「チャンピオン争いを考えて、今日は安全にフィニッシュすべき展開だと思ったんだ。これなら2位でも充分だとね」

 スタートで首位を奪われたフェルナンド・アロンソは、タイトル争いをリードするルイス・ハミルトンのリタイアとマーク・ウェバーの後退を無線で知り、甘い誘惑に負けそうになったことを認めた。しかし、スタンドを埋め尽くす赤い群衆の声援が、彼を奮い立たせた。

「もちろん優勝できれば最高だし、特にここはモンツァだからね。ティフォシのために最後まで戦ったんだ」

 首位ジェンソン・バトンに対する追撃の手を緩めることなく、最高速の伸びないバトンに対してプレッシャーを与え続けた。だからこそバトンはタイヤを上手く使い切れず、状況打開の策として新品ハードタイヤへの交換に打って出ざるを得なかった。
続く

(text by Mineoki Yoneya / photographs by ZEROBORDER)

 

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『F1SCENE DIGITAL』vol.14(2010 Rd.14 イタリア)

 ●アロンソとフェラーリの地元優勝に興奮するティフォシ

 ●タイトル争いはトップ3チーム、5人の戦いへ

 ●ポイント確実のレースで、0周リタイアの辛酸をなめた小林可夢偉

 ●レースドキュメント『モンツァに刻まれ続ける、イタリアの誇り』

 ●小林可夢偉・連載『モンツァにただよい始めた秋の気配』


商品の詳細
 ●著者(発行元):Remixpoint Inc. / Codeximages
 ●レース:2010年第14戦イタリアGP
 ●ページ数:42
 ●ファイルサイズ:11.3MB

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 『F1SCENE DIGITAL』は、F1ドキュメンタリー写真集『F1SCENE』が贈る、レースごとの写真集です。vol.14は、ティフォシで埋め尽くされた伝統のモンツァ、イタリアGP。母国大観衆の面前で逆転勝利を挙げたフェラーリと大観衆の興奮を描きます。 叙情詩的なレースドキュメント、小林可夢偉の連載『夢に向かって』も収録。レースリザルトも掲載し、レース資料としても役立ちます。

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