「ほれ、モニシャごらん、あれがこの村で一番のレッドブルじゃよ」
「さすがに速そうでございますわね、ペーター様」
武士は食わねど高楊枝。困窮にも耐え誇り高く生きるザウバー家のご隠居とお局様が、お散歩の折になにとはなしに見物をされていた時の出来事じゃった。
「どれどれ、先へ歩を進めますかな……」
・
・
・
・
・
・
・
・
レッドブル家の門番たちが、ご隠居の前に立ちはだかったのじゃ! 彼らはお上より「隣家のものには一切見せることはまかりならん」と厳しく言われており、隠すよりなかったのじゃった。
「ワシが見てどうするのじゃ(笑)、ワシが図面でも引けるとな?」
ご隠居もモニシャさまも、そして周りで見ていた村人たちも、レッドブル家の情けない姿に、皆一様に失笑しておった。
こうして一時は緊張の漂った村に、再び笑いが帰ってきたのじゃった。
めでたし、めでたし。
ー完ー
(text by Mineoki Yoneya / photographs by WRI2)