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小林可夢偉の『夢に向かって』……眩しい太陽を覆い隠す、不穏な雲


2011-2-4 21:47


 極寒のパリから僅か1時間半のフライトで降り着いたバレンシアは、抜けるような青い空から強い陽射しが降り注いでいた。まさに南国、着込んでいたダウンジャケットはもう必要ない。可夢偉は寝坊して飛行機に乗り遅れそうになったが、なんとか間に合って良かったと眠そうな目をこすりながら苦笑した。

 翌日、バレンシア郊外のリカルド・トルモ・サーキットでザウバーC30の発表会が行なわれた。ちょうど1年前、ルーキーとしてこの地に立った可夢偉は、今やチームを牽引するエースという立場になった。

「そうじゃなきゃいけないと思ってます。そのためにこのチームにいるんやし、チームも僕にそれを望んでいるからこそ、僕を選んでくれたわけですから。自信はありますよ」

 前日とは打って変わってどんよりと曇った空の下、ホームストレート上でベールを剥がしニューマシンをお披露目した。空気は冷たく、シーズンのスタートを切る晴れの舞台としては、決して望ましい天候ではなかった。

 この日の朝に初めて見たというC30を、可夢偉は「フェラーリみたい」と表現した。だがもちろん、可夢偉にとって重要なのは見た目よりも速さの方だ。

 寒さに凍えながらコクピットに乗り込み、可夢偉は3時間のPR撮影用走行のためコースへと出て行った。

 走り始めてすぐに、コクピットの中から粉末が舞い散った。コンポジットの製造時に生じたもので、まさにできたてのクルマのシェイクダウンだということを物語る。新車のシェイクダウンは、可夢偉にとっても初めての体験だ。

「流して走って、(ステアリング上の)ボタンを押したりしただけ。後は何もしてない。クルマの感触がどうこういうレベルじゃないですよ、フィルミングですから。コクピットの真ん前にカメラを置かれた時は、前が見えなくてビックリしたけど(苦笑)」

 本番は明日から。最後まで曇り空が晴れることはなかったこの日、可夢偉はクルマについてのコメントを避けた。

(続きは『F1SCENE DIGITAL』2011 Winter Test vol.1(2011 バレンシア)にて)


 text by Mineoki Yoneya / photographs by Zeroborder

 

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