ルノーのニューマシンR31は、昨年中から彼らが標榜していた通り、アグレッシブな開発アプローチでデザインされたマシンとなった。
ルノーは2009年末にルノー本社が株式をジニーキャピタルに売却し、チーム運営体制が大きく変わった。それゆえに昨年は若干の混乱や不安定さも抱えながらのシーズンスタートとなったが、今季はジニー体制2年目であり、安定したチーム状況の中でマシン開発に専念することができた。技術体制は従来から引き続き変わっておらず、技術予算もルノーワークス時代と変わらない額が確保された上でR31の開発は進められてきた。
オーナーのジェラール・ロペスが「指示したのはただひとつ、革新的で、リスクを恐れずに開発しろということだけだ」と語る通り、R31は非常にアグレッシブなマシンに仕上がっている。テクニカルディレクターのジェームス・アリソンはこう語る。
「R31はまさにアグレッシブや革新的という形容詞がぴったりのクルマだ。マシンコンセプトはこれまでのどのマシンとも大きく異なっている」
複数回の表彰台を獲得し、中団グループで最上位のポジションを確固たるものとした昨年は、シーズンを通してラップタイムにして2秒もの開発進歩を果たした。その開発ペースを引き合いに出し、エリック・ブイエ代表は「この冬の間も、それと同じ姿勢で開発に当たってきた。地に足を付け、テストを最大限に生かすことができれば、2011年は最高のスタートを切ることができると確信している」と自信を見せる。表彰台争いに加わった昨年を受け、今季の目標は優勝争いに加わることだという。
その目的を達成するため、R31は前年型R30から大きく変化している。部品の実に92%が完全に刷新されているという。
「表彰台、そして優勝争いをするために、リスクを負うことを決断したんだ」
ロペス代表はそう語る。
その冒険の最たるものが、革新的な前方排気システムだ。
「レギュレーション変更を受け、空力性能を最大限に高めるための方法も大きく変わった。我々のコンセプトは、フロアへ吹き付ける排気システム、ブロウンディフューザーをさらに進化させることだった。全くの白紙から設計をし直したんだ」(アリソン)
エンジン排気管をサイドポッド前方へと排出し、サイドポッド脇からディフューザー上へと大量の気流を流し込むという手法だ。昨年中に熟成を進めた常時排気コントロールを行なうことで、リアエンドへの気流量と気流速度は高まり、ディフューザーの効果はさらに高まっているはずだ。
リアサスペンションにはプルロッド式を採用し、ギアボックスはかなりコンパクトに仕上げて気流の通り道を確保している。ギアボックスは驚くほどコンパクトで、ドライブシャフトの角度を見ても分かる通り、低く抑えられている。リアからの眺めは、レッドブルを彷彿とさせる低さとなっている。
(続きは
『ロータス・ルノーGP R31(Technical File 2011 LAUNCH EDITION)』にて)
text by Mineoki Yoneya / photographs by Wri2