前戦マレーシアGPから2週連続の開催となったこともあり、また開幕直後のフライアウェイ戦で物資輸送に時間とコストが必要とされることもあり、第3戦中国GPにはさほど多くのアップデートは見られなかった。上海とセパンともに定番のティルケサーキットということで、サーキット特性が似通っていることもその理由のひとつだ。
そんな中で唯一とも言える存在であり、最も大きなアップデートを施してきたのがフェラーリだった。開幕以来の予想外の不振に苦しんでいるフェラーリは、対策部品の開発に追われており、グランプリ現場で実地テストを行なう必要に迫られていたからだ。
マラネロではすでに対策開発プログラムが進められているが、実はこれは開幕よりも前の最終バルセロナ合同テストの後から始動していたものだ。ここで投入した本番仕様空力パッケージのうち期待通りの性能を示さなかったものがあり、その対策に追われてきた。その最初の成果が中国GPに投入されたアップデートというわけだ。
現在のフェラーリが抱えている問題とは、具体的に言えばフロントのダウンフォー不足だ。おそらくは最終バルセロナ仕様で投入した新型フロントウイングが想定通りのダウンフォースを発生させることができず、その結果、前後空力バランスが崩れ、マシン全体としてのパフォーマンスが著しく損なわれてしまったのだ。リアのダウンフォース不足から全体のダウンフォース設定を上げられなかったマクラーレンとは真逆の傾向だった。
フェラーリは中国GPに新型フロントウイングを持ち込み、金曜フリー走行でフェルナンド・アロンソ車にのみ装着してテストを行なった。具体的には、最上段フラップ形状、フラップ間のフェンス(黒色部分)、翼端板後端の切り欠き、ステー内側のダミーカメラ配置などが変更されている。これに伴い、フロントアップライト内側のブレーキダクト周辺にも湾曲を強めフィンを装着するなどの改修を施してきた。
しかしこれも結果は思わしくなかったようで、金曜午後には旧型へと戻すことを決めた。ウイング全域にわたって蛍光色のフロービズを塗って気流確認テストも行なっていたが、なりふり構わないその姿勢が、今のフェラーリの苦しさを物語っていた。
フロントウイングはマシン全体の空気流コントロールを大きく左右するものだけに、その性能不足は致命的だと言える。フェラーリ浮上の鍵はフロントが握っていそうだ。
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(text by Mineoki Yoneya / photographs by Wri2, La Vie Creative)