ザウバーC30は相変わらずドライの土曜日までは最悪とも言えるマシン状況で、Q3には全く手が届かない状況だった。
これはモナコと同様、縁石の乗り越えが上手くできないという問題を抱えていたためで、ドライバーたちが本来ならば直線的に乗り越えたりマシンの向きを変えたりするのに使いたい縁石を、全くと言って良いほど使わずに走ることを余儀なくされたからだった。事実、可夢偉は金曜FP-2で、そして急きょ代役出場することになったペドロ・デ・ラ・ロサは土曜FP-3でターン4の縁石に足を取られてクラッシュを喫した。
「大丈夫かなっていうくらい危ないマシン。縁石なんて恐くて乗れない。決勝はドライなら入賞もできるかもしれないけど、ウエットになったら最悪なことになるはず」
予選後、可夢偉はそう予想していたほどだった。去年は1周目にクラッシュを演じているだけに、「今回は無事に終わることだけを考えたい」と可夢偉。
しかし雨になった決勝で走り始めてみれば、マシンは予想に反してスムーズな反応を見せた。ウエットタイヤでもインターミディエイトタイヤでも、上位勢と互角かそれ以上の走りを見せた。可夢偉は周囲が刻々と変わる雨脚に翻弄されてピットインする間に2位まで順位を上げ、そのポジションを堅持した。
豪雨による赤旗中断後、路面が乾き始めるとザウバーC30は予選と同じように戦闘力を失ってしまい、7位フィニッシュを余儀なくされた。しかし可夢偉は言った。
「あのまま雨が降り続いてれば、表彰台に行ってたからね、マジで。ガッカリ。表彰台を逃したからっていうよりも、ドライでの遅さにね」
マシンの不利を帳消しにする雨という舞台があれば、運ではなく、実力で手にできそうだった表彰台。最後は悔しい結果に終わったが、あの2位快走によって可夢偉とザウバー・チームが得たものは大きかったはずだ。
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(text by Mineoki Yoneya / photographs by Wri2, La Vie Creative)