かつてメルセデス・ベンツがF1に参戦していた1954年・55年に12戦9勝という圧倒的な速さを見せシーズンを席巻した伝説のマシン。
そのW196が、当代のメルセデス・ドライバー、ミハエル・シューマッハとニコ・ロズベルグの手によってニュルブルクリンクに蘇った。全長20kmを超すノルドシュライフェの難コースを駆け抜ける勇姿は、まさに光り輝く矢の如し。
1954年に始まった2.5リッター規定に合わせてデザインされたM196エンジンは、直列4気筒を縦に2基並べて53度傾斜させてマウント。最高回転数は8700rpm、出力は268馬力からさらに改良が進められて最後は290馬力を誇った。
ボディフォルムには2種類があり、葉巻形状のオープンホイール型と、「ストリームライン」の愛称で知られるタイヤまで覆ったタイプ。ランスで行なわれた1954年フランスGPでデビューウィンを飾った時点では後者がオリジナルデザインだったが、ドライバーの前方視界が悪かったため3戦目のドイツGPには前者が用意され、後者は高速サーキット専用としてモンツァのみで使用されることになった。
当初は2350mmのホイールベースで製作されたが、翌55年には2210mmのミディアムホイールベースへと改良され、モナコには2150mmのショートホイールベース版まで用意された。フロントブレーキは当初インボード式だったが、後にアウトボード式も導入されてサーキット特性に合わせて使い分けられた。
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(text by Mineoki Yoneya / photographs by Wri2, La Vie Creative)