ページの先頭です。本文を読み飛ばして、このサイトのメニューなどを読む

 

2012年マレーシアGP 小林可夢偉『土砂降りの雨に打たれて。』


2012-3-27 23:00


 可夢偉、苦難の時。

 トラブル、セットアップ失敗、そしてまたトラブル。
 不運に不運が続く、開幕戦とは真逆の週末。
 さらにはチームメイトが先んじ来て初表彰台を獲得。
 マレーシアは可夢偉にとって苦悩の週末になった。
 その真実を描く。



「牧場に行って、牛を見てきました。パースってメチャクチャ太陽が強いんです。ヤバいですよ」

 そう言って可夢偉は、日に焼けた顔を歪ませた。

 メルボルンの開幕戦からわずか4日、グランプリサーカスはもうマレーシアに移動し次の週末を迎えようとしていた。このクアラルンプールにも、強い陽射しが降り注いでいる。

「開幕戦の後の気分? 美味しい肉が見つかって良かったなぁって(笑)。でも3日間とも移動ばっかりで大変でしたよ」

 可夢偉は開幕戦の成果に、確かな手応えを感じていた。

 それは最終周の幸運による6位という結果にではなく、C31というマシンが現状で持っているポテンシャルに対してだ。

 だからこそ、今の気持ちを聞かれても答えをはぐらかした。

 手負いのレースではなく100%の実力を出し切ることができたならば、期待以上の結果がついてきそうな予感があった。だからこそ、その数字を声にはしたくなかった。声にすれば、それは現実のものとして目の前に立ちはだかってしまうのだから。

「まぁでも、開幕戦はポイントを獲るのが一番大事やったから、結果ラッキーであの順位やったけど、状況を見てたら9位のままでも充分やったと思いますね」

 そう言う可夢偉にしつこく食い下がると、「今回も目標はポイントですね」と言った。

 もっと上を目指す気はないのか? そう問い掛けると、「そんなに欲張んないです」といって悪戯っぽく笑った。

 そして最後に可夢偉はこう付け加えた。

「予選をきちんとまとめて、スムーズに力を出し切りたいですね」

 セパンの空は変わりやすく、さっきまで強い太陽が顔を出していたかと思えば、もう別の方角からは黒い雲が上ってくる。

 昼過ぎの雨だけでは飽き足らず、午後3時を前に再びの豪雨。

 可夢偉の期待とは裏腹に、今年のセパンには荒れ模様の予感が漂っていた。

(続く)

【F1LIFE新書】2012年マレーシアGP 小林可夢偉 土砂降りの雨に打たれて。

著者:米家峰起
発行日:2012年3月27日
ページ数:19
データ形式:PDF(PC、iPad/iPhone、Android対応)
データサイズ:5.5MB
ダウンロード価格:210円(税込)
(販売期間:2012年4月12日まで)

購入はこちら『F1LIFE』ストアにて。

https://www.f1-life.net/store/f1lb-0007.html

ページの終端です。ページの先頭に戻る