F1マシン製造の中で、最も手間もコストもかかるのがモノコック製造だ。であれば、その製造数からチームの財政状況が見えてくるのではないかと考え、2012年の各チームのモノコック製造数を調査してみた。以下がその調査結果だ。
レッドブル:5台(2011年の実績より推測)
マクラーレン:4台
フェラーリ:5台
メルセデスAMG:5台
ロータス:5台(実質4台)
フォースインディア:4台
ザウバー:4台
トロロッソ:4台
ウイリアムズ:4台
ケータハム:3台
HRT:3台
マルシア:3台
この通り、見事にチームランキング順に製造台数が並んだ。3台というのは、レースカー2台とスペアモノコック1台で運営するため、最小限度の製造数だ。中団チームは4台、上位チームは5台を製造している。
その中で目立つのは、
マクラーレンが4台しか製造していないという点。やはり彼らの
財政的な厳しさはこんなところにも表われているのだろう。
フェラーリは60年間にわたって順にシャシー番号を割り振っており、F2012は292から296までの5台にあたる。クラッシュテストに使用した1号車にあたる292は実戦では使用せず、293もマッサが開幕戦で使用したのみ。マッサはその後シーズンを通して294のみを使用し、アロンソは295と296を使用しているが、296がベルギーGPで破損してからは295を使用し続けている。ドライバーの好みで使用シャシーを変えず、
使用したのは実質3台のみという堅実さだ。
ロータスはテスト期間中に初期デザインに問題が発覚し、フロントサスペンションのマウント部の剛性不足が明らかになった。そのためか2号車は未使用で、1号車もテスト以外ではグロージャンがマレーシアGPまでの2戦で使用したのみ。ライコネンがカナダGPまでは3号車、それ以降は5号車を使用し、グロージャンはベルギーGPで破損するまでは4号車を使い、それ以降はライコネンが使用していた3号車に乗り換えている。5台を製造してはいるが、
実質的な製造数は4台のみと言っていいだろう。
面白いのはメルセデスAMGだ。
シューマッハがゲン担ぎで「7」や奇数番号にこだわったのはよく知られている話だが、実はメルセデスAMGのシャシー番号は1、3、5、7、9と
奇数番号だけが使用されている。2010年は通常通りだったが、2011年からはこの方式となっている。ちなみにロズベルグが中国GPで優勝したのは3号車で、これはシューマッハが引退レースとなったブラジルGPでも使用している。
ザウバーは4台を製造しているが、小林可夢偉はハンガリーGPまでは1号車と3号車を使用し、ベルギーGP以降は4号車のみを使っているが、
イタリアGPだけは2号車を使用している。これは前週のベルギーGPで側面にダメージを受け、ファクトリーでの再チェックが必要になったためだ。2号車はヨーロッパGPからハンガリーGPまでの4戦のみペレスが使用しただけのモノコックで、最後はアブダビのヤングドライバーズテストで使用されて、最後の2戦には送られていない。夏休み以降は3号車と4号車をレースカー、とする体制を取っており、ペレスは後半戦は3号車を使用している。
ちなみに開幕前テストの段階では1号車のみ、もしくはせいぜい2号車までを走らせるものだが、今季の開幕前テストで
マルシアはすでに3号車までを走らせている。これはつまり、昨年型のデザインだけでなくモノコック自体をも流用しているということだ。
いずれにしても、2008年以前であれば年間のモノコック製造数が二ケタに迫るというチームも少なくなかった。それに比べれば、上位チームでも5台しか製造していない現在は、コスト削減の努力が強く反映されていると言えるだろう。
このように、モノコックのシャシー番号を見ていくだけでも、いろんなことが見えてくる。
(text by Mineoki YONEYA / photo by Wri2)