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無視できない地元住民の声

オーストラリアGPナイトレース化への課題

2013-3-8 14:25


 オーストラリアGPのナイトレース化を望む声が高まっているとの報道が一部でなされたが、これはオーストラリアGP開催に反対する地元民の声を全く理解しない蛮行だと言える。

 メルボルンではかねてから、大きな赤字を生み出すこのイベントに対する反対の声が地元住民から挙がっていた。それゆえにバーニーが「50年契約を結んでもいい」と語っても、主催者側はいまだに契約の延長に踏み切れないでいる状態だ。

 反対の理由には、赤字を税金で補填することへの不満もさることながら、街の中心部から2kmと離れていないアルバートパークで、平日の木曜日からイベントを開催し大きなエンジン音を響かせ続けていることに対する不満もある。もちろん、国内外から大勢の観客が押し寄せ、街中が大騒ぎになることもある。こうした騒動が住民に利益をもたらすならまだしも、赤字を生んでいるという事実が、日常生活を煩わされる古くからの地元住民にとっては許しがたいことなのだ。

 こうした背景があるにもかかわらず、ナイトレース化をするということは、エンジン音による騒音公害を夜まで拡大することに繋がる。つまり、地元住民の反対の声とは逆に、歩み寄るどころかさらに状況を悪化させることになる。イベントが夜に移行すれば、その後のどんちゃん騒ぎもさらに遅い時間までずれ込む。メルボルンの街中の夜がどれほど騒々しいものか、それはアルバートパーク周辺の高級ホテルに宿泊している者には分からないだろう。

 意外と知られていない事実だが、実は騒音被害を訴えグランプリやテストの開催に反対する運動は、多くのサーキット周辺で存在する。バルセロナやヘレスでさえもそうだ。F1マシンのエキゾーストノートは街中に響き渡るほどで、我々が想像するよりもはるかに大きいのだ。平日・休日にかかわらず朝から晩まで聞かされれば、レースに興味のない一般人にとっては迷惑きわまりないと言われても当然だろう。

 ナイトレースは視覚的にも美しく良いものだが、今回のオーストラリアGPのナイトレース化案からは、ヨーロッパのTV視聴者や関係者の都合しか伝わってこない。その点が非常に残念でならない。メルボルンでの開催継続を望むのなら、その開催を支えている地元住民の心情にも配慮しなければならないだろう。もちろん、そんなことも分からないバーニーではないはずだ。

(text by Mineoki YONEYA / photo by Wri2)


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