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ただし調査結果には疑問の余地あり

ピレリ、リアタイヤ左右逆装着などが要因と断定

2013-7-3 22:21


 7月2日、ピレリはイギリスGPでのバースト事故多発を受けて行なった/strong>調査結果を発表した。

 公式声明によれば、4つの要因の組み合わせによって引き起こされた事象だという。

(1)リアタイヤの左右逆装着
 今季からフェラーリやマクラーレン、ロータス、フォースインディアなどが考案しタイヤのデグラデーションを低減する方法となっていた。しかし、ピレリはこれによってサイドウォールに想定外の負荷が掛かることを指摘している。

(2)内圧の低さ
 内圧が低いと接地面積が増えるが、高速耐久性は低下する。

(3)極端なキャンバー角
 キャンバー角をつけすぎると、イン側だけに偏って接地する時間が長く、イン側に負荷が掛かりやすい。

(4)シルバーストンの高い縁石
 ターン4の縁石がアグレッシブだと指摘している。

 なお、ピレリはこれまで(1)の左右逆装着は黙認していた。通常の範囲であれば、特に問題がなかったためだ。

 ブリヂストン時代のタイヤとは違い、ピレリの場合はトレッドの継ぎ目がない構造であるため、逆方向に装着してもトレッドがめくれる原因になるようなことはない。当然どのチームもデグラデーションを低減するためにこの方策をとっていたわけで、メルセデスAMGがバルセロナで行なったテストでもピレリからの指示によってこの左右逆装着が試されていたという。となれば、ピレリはそこに危険性がないことを認識していたはずだ。

 (2)と(3)の内圧やキャンバーについては当然、ピレリからチームに対して制限値が指示されている。ミシュラン対ブリヂストンのタイヤ戦争の頃はグリップを最大限に高める貯めに内圧を規定値よりも低く設定するチームもあったが、現在はデグラデーションとの戦いもあり、どのチームも制限値は守っていると明言している。2年前のスパで問題になったキャンバー角についても同様だ。

 (4)の縁石については、否定的な見方が多く、シルバーストンもこれを否定している。ターン4の縁石はターン3と同様で、低くフラット。縁石の内側に大きなソーセージがあるが、イン側のショルダーやサイドウォールが傷付くことは考えにくい。

 マクラーレンの今井弘エンジニアは『週刊F1LIFE』vol.13で今回の問題について詳細を語っているが、「分かっていても対策できない問題」だと話す。上記のような項目、リアタイヤの左右逆装着などをやめて解決するのであれば、とっくにそうしているはずだ。

 今回のピレリの調査発表では、原因と考えられる要素の説明だけで、バーストが発生した際の具体的な事象が説明されていない。新接着方式に問題があったのか、ショルダーが破損したのかは明らかにされていない。イギリスGPでは新接着方式によってデラミネーションが全く発生しなかったとしているが、フェルナンド・アロンソの第1スティントのタイヤはデラミネーション寸前であり、ニコ・ロズベルグの第3スティントの左リアタイヤにもデラミネーションが疑われる大きな穴が空いていた。ピレリの発表を鵜呑みにすることはできないだろう。

 ピレリとしては自社製品に問題があったことは認めたくないだろうし、その他の要因によって引き起こされたものと結論づけたい意図は分かる。理由がどうあれ、次戦で別スペックのタイヤに変更してしまえば、問題はもう起きず真実は闇に隠れると考えているのかもしれない。

(text by Mineoki YONEYA / photo by Wri2)


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