ページの先頭です。本文を読み飛ばして、このサイトのメニューなどを読む

 
特別解説企画

ピットストップシグナルのしくみとは?

2013-7-12 18:39


 ドイツGPでマーク・ウェバーが右リアタイヤの装着が完了する前に発進し大事故になったが、これはピットシグナルが抱える危険性の露呈でもあった。ピットシグナルはどのような仕組みで機能しているのだろうか? チームごとに細かな違いはあるものの、その基本的なシステムをご紹介しよう。



(1)まず、4輪の各ホイールガンにはボタンが装備されている。ホイールナットの締め付けが完了すると、ガンマンがこれを押す。



 ガンマンはナットを締め終わり、ガンがホイールから離れる前にボタンを押す。従来は手を挙げて作業完了をロリポップマンに知らせていたが、このボタンにより格段に速く作業完了を知らせることができる。

 なお、ピットストップは手動で行なわれなければならないと定められており、ナットの締め付けなどをセンサーで自動的に判別してライトを切り替えることは許されていない。だからガンマンがボタンを操作するのだ。

(2)フロント2つのホイールガンボタンが押されると、フロントジャッキマン用のライト(シグナルの裏側やジャッキ、ヘルメット内に装備)が点灯し、ジャッキを下ろす。と同時に作業完了を知らせるボタンを押す(チームによっては存在しない場合もあり)。



 リアも同様に、リア2輪のホイールガンボタンと連動したライトが用意されている。こうすることで、全輪の作業完了を待つことなく、少しでも早く効率よくジャッキダウンすることができる。同様に作業完了ボタンも押す。

(3)4輪全てのホイールガンボタン、前後ジャッキのボタン全てが押されると、ドライバー用のピットシグナルがグリーンに変わる。ドライバーはこれを見て発進する。

 ナットさえ締まってしまえば、あとはジャッキダウンしても発進しても大丈夫。そのくらい際どい速さで発進することで、2秒台という驚速ピットストップは実現されているのだ。

(4)なお、前方にはロリポップマンに代わるピットストップ責任者がおり、全体の作業状況を監視している。この責任者はもうひとつのボタンを持っている。

 ナットを締めるのに手間取っているなど何らかの問題が発生した場合には、この責任者がボタンを押し、このボタンが押されている間はシグナルがレッドからグリーンに変わらないようなシステムになっている。

 仮にガンマンが誤って作業完了ボタンを押してしまっても、責任者が状況を把握していればシグナルが自動的に変わってしまうのを防ぐことができるのだ。また、ピットレーンに他車が来ていて発進を待たなければならない場合などにも使用する。



 今回の事故は、ガンマンの操作ミスと、責任者が右リアの状況を正確に把握できなかったためという、2重のミスによって起きてしまったのだ。

 チームによっては前後や左右に複数の監督者を置いているケースもあるが、ピットシグナルシステムを使っていても、結局は操作するのは人間であり、ミスも起きる。その点はロリポップを使用していた頃と変わらない。問題は、いかに運用するかにあるのだ。

 なお、こうしたボタンの設置にも工夫があるため、各チームともホイールガンは極めて厳重に扱っており、普段はカバーやボックスに収納して他チームの目に触れないようにしているほどだ。写真撮影も極めて難しい。

(text by Mineoki YONEYA / photo by Wri2, Mineoki YONEYA)


ページの終端です。ページの先頭に戻る