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ピレリの2013年タイヤ解説

「より速く、よりバトルしやすく、面白い」F1に

2013-1-24 20:33


 1月23日、ピレリがミラノの本社で2013年用タイヤの発表を行ないました。供給開始以来F1を面白くしてくれたものの、特に昨シーズン後半はレースがつまらない原因のひとつとなっていましたが、今季に向けて期待を抱かせてくれるタイヤ像が見えてきたと言って良いのではないでしょうか。

 簡単に言うと、コンパウンドもコンストラクションも完全に新しくなって、グリップは高くて速いけど、デグラデーションも大きい。要するに、速くてタレやすいタイヤです。だったらレースは面白くなるはず。

 コンパウンドが柔らかくなり(ハードが去年ミディアムくらい)、ラップタイムは0.5秒ほど速くなります。ワーキングレンジが変更され広くなっているので、セットアップの幅が広がったため、去年のような"当たり外れ"は少なくなるのではないかと見られます。

 また、デグラには摩耗と熱(と化学変化)による性能低下の2種類がありますが、今季のタイヤは摩耗ではなく熱変化によるデグラを念頭に置いて開発されています。ウォームアップ性が高く、なおかつタレも早いタイヤです。摩耗ではないので、完全摩耗してクリフに、という従来のピレリタイヤとは少し傾向が異なるかもしれません。

 各スペックの差は0.6〜0.8秒ほどになるとのことで、レースパフォーマンスにも明確な差が生まれ、戦略面の幅も広がります。デグラの増大と合わせて、バトルとオーバーテイク増加にもつながるはずです。



 コンストラクションの変更は、フットプリント(路面接地形状、コンタクトパッチ)を大きくするため。トレッド内部のカーカス形状が変わり、サイドウォールも柔軟になっているため、剛性確保のためショルダーを強化。

 これによってグリップ向上、特にコーナーの中からのトラクションが向上しています。早くアクセルが踏めるし、ドライバビリティも向上。さらに、フットプリントが拡大したことで、これまでピレリタイヤの弱点だったブレーキング時のスタビリティも向上するでしょうから、バトルも増えるし、アロンソやハミルトンのようなドライビングスタイルの長所が生きてくるはずです。

 ただし、サイドウォールが10%ほど柔らかくなっているので、走行中の変形も大きくなり、空力的な影響も大きくなります。開幕前テストでは各チームともそのデータ収集も熱心に進めてくるでしょうが、ここを正確にできないと思わぬ落とし穴にハマる可能性もあります。風洞のコラレーションが上手くいかなくなり、いくら空力パーツを投入しても思ったように機能しないなどなど。

 他にもハードタイヤのロゴ色がシルバーからオレンジに変わったり、雨用タイヤのリア構造が変わってグリップ安定性が向上していたりします。フットプリント内の熱分布も改良されて、ブリスター対策も。

 クルマのレギュレーションに変更はなくタイヤだけが変わる今季のF1ですが、そのタイヤの変化によって、2013年のF1は「より速く、よりバトルしやすく、面白い」レースになるはずです。ピレリだからダメとかいう先入観は捨てて見た方がいいのではないでしょうか。

(text by Mineoki YONEYA / photo by Pirelli)




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