マレーシアGPでルイス・ハミルトンに無線で飛んでいた燃料セーブのための指示は
「スロットルのリフトオフ、コーナーでのコースティング、遅めのダウンシフト」だった。それぞれがどんなものなのか、改めて解説しておこう。
まず
リフトオフとは、スロットルを戻すこと。当然ながら、スロットルを開けなければそのぶん燃料の消費は少なくなる。ストレートエンドでのブレーキングの際に、早めにスロットルを戻すことを意味する。
次に
コースティングとは、コーナーの中などでスロットルを戻した状態で、
惰性を生かして走ること。ブレーキングを遅らせて完全に減速しきってしまい、エイペックスから急激に加速していくストップ&ゴーの走りではなく、緩やかに減速し緩やかにコーナリングし緩やかに加速していく、という
緩やかな走り方になる。
これは2011年の
オフスロットルブローの時によく使われたテクニックで、本来はパーシャルスロットル(数十%の開度)で走るコーナーでもあえてスロットルを閉じてしまい、オフスロットルブローのダウンフォースを最大限に生かそうというものだった。
最後に指示が飛んだのは、7速から6速への
ダウンシフトを遅らせることだった。これはつまり、しっかりブレーキングをして
エンジン回転数を落としてからダウンシフトしろということ。でなければ、シフトダウンした際にエンジン回転数が上がり、そのぶん燃料消費量は多くなるからだ。その差は微々たるものだろうが、最後はそのくらい重箱の隅をつつくような燃料セーブまで必要な状況に追い込まれていたということだ。
チームからは「最大限の燃料セーブが必要だ」と指示されており、これらは当然、エンジンの最高回転数設定や燃料混合比を最低レベルにまで下げた上での指示だ。マレーシアGPでのハミルトンに対するあの燃費セーブ指示は、メルセデスAMGがいかに燃料面で追い詰められていたか、それを如実に物語っていたと言えるだろう。タイトルスポンサーのペトロナスのお膝元だけに、ガス欠などという自体は絶対にあってはならなかったという事情もあっただろうが……。
(text by Mineoki YONEYA / photo by Wri2)